ステージ7 ページ19
side鴇
白いワイシャツに古着のオレンジのニットベスト、ボトムスにはこれまた古着のデニムのロングスカートを合わせる。髪は緩く巻いて、メイクはナチュラルに。暗めのオレンジリップを唇に溶かせば満足のいく仕上がりになる。外は寒いのでデニムのジャケットを抱えて、ゴールドと革のアクセサリーをいくつか足していけば、全体がまとまった。
車を走らせて彼の待つ場所に向かう。外はまだ明るいが、時間はもうすぐ日の入りを迎える頃だ。冬は日が沈むのが一瞬だ。
マンションの下に着くと目的の相手が既に待っていた。
『ごめん、待たせちゃった？』
向「いや、丁度出てきたところやで。小晴さん、いっつも5分前には着かはるから」
『そっか、良かった。寒い思いさせちゃったかと』
そうは言っているけれど、きっと5分くらいは待たせてしまっているだろう。すぐに彼を中に呼び込む。
向「はい、小晴さん」
『？ありがとう。あ、珈琲！やったあ』
向「タダで乗せてもらう訳にはいかへんしな」
『それふっかに聞かせてあげたい』
向「あははっ」
『でもね、正直向井くんの珈琲期待してたんだ。ドライブにはこれがないとね』
渡されたタンブラーを1口飲む。中身の冷え具合が、彼の待ち時間を教えてくれる。思っていたより待たせてしまっただろうか。
『うん、美味しい』
向「ほんま？良かったあ」
『じゃあ出発するねー』
向「はーい」
車を発進させる。南に向かってグングンとスピードを増していく。
向「小晴さん、今日の服古着やんな？めっちゃ可愛い」
『よく分かったね。ニットもスカートも古着なんだ』
向「なんか古着特有の匂いするし。俺この匂い好きなんよ」
そう言って彼は後部座席から私の肩に顔を近づけて、匂いを嗅ぐ振りをする。
『顔出したら駄目だよ、危ないから』
「…はあい」
そう言うと、少し残念そうな間延びした返事が来る。大人しく引き下がって、後部座席に座り直していた。
『向井くんは今日もお洒落だね。そのベストめっちゃ可愛い』
向「あ、これ？流石小晴さん、お目が高いわあ。古着のフィッシングベストなんやけど、一目惚れして買っちゃって」
『古着屋さんでびびっときたら買っちゃうよねー。分かる』
他愛ない会話を続けて、車を1時間ほど走らせると目的地に着いた。空はほんのり青が残っているが大半を藍が占めていた。
車を近くのパーキングに停める。
『着いたよ』
向「ありがとう」
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作者名：不明 | 作成日時：2024年1月13日 23時
