ステージ9 ページ22
side鴇
店でレミオロメンの『3月9日』が流れていた。この頃、卒業ソングを耳にする機会が増えた。卒業といえば、私は高校の卒業式を思い出す。
2013年3月1日。
私、鴇小晴は本日高校を卒業した。卒業式が終わり、皆校庭で思い思いに写真を撮っている。私も、友達に声を掛けて掛けられて、沢山の写真を撮る。
？「小晴！」
『え？』
突然後ろから声を掛けられて、振り向く。振り向いた先には、大ちゃんがいた。
『…！大ちゃ、わっ！』
佐「卒業おめでとーーー！！！」
私が大ちゃんに気付くと同時に抱き締められる。彼は潰れそうなくらいに私を抱き締めてきて、少し…いやかなり苦しい。少しして、彼の拘束から解放された。
『はあ、びっくりしたよー』
佐「にゃははっ、ごめん。嬉しすぎて」
佐「改めて、卒業おめでとう」
そう言って彼は花束を私の前に差し出す。桃色の胡蝶蘭だった。ゆらりと華やぐ胡蝶蘭たちが綺麗だ。
『綺麗…、ありがとう。大ちゃん』
佐「どういたしまして！喜んでもらえて良かった」
ぱあっと太陽のように笑う大ちゃんが眩しい。自分でも言語化できない気持ちが押し寄せて、目頭が熱くなった。
佐「小晴ー。これからもよろしくね」
『大ちゃぁん…大好きぃ』
佐「にゃは、俺もー！」
大ちゃんは涙を零す私を、今度は包み込むように優しくハグしてくれた。彼のパーカーに涙が染みを作っていく。
『そういえば、何で胡蝶蘭？』
佐「ああ、それはね？阿部ちゃんに花束何がいいかなって聞いたら、胡蝶蘭の花言葉は「幸福が飛んでくる」だって言うから」
『へぇー、そうなんだ！んふふっありがとう』
佐「小晴は4月から大学生？」
『うん、中央大学理工学部に合格しました！』
佐「え！？凄！てか聞いてないんだけど！？」
『まあ、阿部ちゃんにしか言ってないもん』
佐「は？狡いよ阿部ちゃんだけ！」
『まあ彼上智大生ですから。勉強教えてもらってたんだあ』
佐「ふーん」
『言わなかったのはごめんって』
佐「別にいいけどー？」
分かりやすく臍を曲げるふりをする大ちゃん。それがなんだか可笑しくて、いつもの帰り道が何倍も鮮やかに見えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 205人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：不明 | 作成日時：2024年1月13日 23時
