ステージ12 ページ27
side鴇
2月23日12時。
私は六本木ヒルズの映画館を訪れていた。辺りを見渡すと、グッズやパンフレットを購入する人が沢山いた。私もパンフレットとドリンクを購入して、スマホの電源を切ってスクリーンに入場した。
映画『マッチング』の初日舞台挨拶を予約することができたのは奇跡に近い。情報が公開されてから、予約開始の日を待ち侘びていた。時間になってすぐ、手続きを済ませると予約を取ることができた。
今日は、ショッキングピンクの薄手のニットトップスに藍の深いデニムワンピースを合わせている。後ろの方の左側にある予約した席に着く。
映画が終わると、アナウンサーの方の呼び掛けでキャスト陣と監督が入場した。映画とは違う柔らかい雰囲気が会場を包む。
キャスト陣が客席に向かって手を振る。突然大介と目が合った。彼の瞳は元々大きいのに、更に大きく開かれている。しー、と口の前に人差し指を持っていくと、彼ははっと気づいて直ぐに芸能人の佐久間大介に戻った。
その後も話は進んでいく。テレビでよく見る光景が目の前に広がっていることに少しだけワクワクしていた。やっぱり単純にお客さんとして見られるのは楽しい。ライブだと舞台裏や関係者席からでないと見られないから。
写真撮影やら何やらが終わって、席を立つ。スクリーンを出たところで、知らない人に声を掛けられた。
？「すみません。鴇小晴さんですね？」
『…はい』
私のことを知っているSnow Manのファンだろうか、それともダンサーTOKIを知っている人だろうか、と思った。
？「直ぐに終わると思いますので、少し着いてきていただけませんか？あ、佐久間さんからのお願いで来ているだけで、怪しいものではありません」
言い分は随分怪しかったが、それらしい名刺を手渡されたので彼に着いていくことにした。スタッフオンリーの扉を通過し、廊下を渡っているとピンクの頭が見えた。
佐「あ、小晴」
『久しぶり』
佐「来てたなら言ってくれたら良かったのに」
『気付かれないと思ってたから。映画公開おめでとう。面白かったよ』
佐「ありがと。あのさ、X用に写真だけ撮っていい？」
『うん。良いよ』
佐「ありがとう。じゃ、撮るよー」
彼のスマホ画面を覗くようにカメラに写る。身長が同じくらいなので特に屈んだり角度を調節したりはしなくてよかった。余所行きにふんわり微笑んで、主役を主張するように大介の方に手を開く。
パシャ
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作者名：不明 | 作成日時：2024年1月13日 23時
