Shall we Dance? (ページ38)

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side佐久間

『それで、今日はどうしたの？』

小晴の艶やかな瞳に問われる。以前と変わらない小晴の好きなYVES SAINT LAURENTのオピウムの香りが答えを誘う。

佐「まだ秘密ーーー」

でも、あくまで明るくおどけてみせる。

『ええ、けち』
佐「後で教えてあげるから。今はご飯を楽しもう？」

そう話していると、アペリティフが運ばれてきた。白のスパークリングワインが2人のグラスに注がれていく。

佐「乾杯」
『乾杯』

佐「小晴は仕事の調子はどう？」
『君たちのお陰で有難いことに忙しくさせてもらってますよ。Snow Man以外での振付の依頼も増えてきたし』
『そっちは？』
佐「こっちも忙しいよ。映画もあったし、雑誌も声掛けてもらうことが増えて」
『あ、andGIRL良かったよ』
佐「え！読んだの…？恥ずかしー」
『うふふ』

何事もなかったかのように話す小晴。俺に呼ばれたとき、どんな気持ちだっただろう。きっと来たくなかっただろうな。それでも断らなかったのは、小晴もまたあの時のように戻りたいと思っているからだろうか。そんな考えは自惚れているだろうか。
小晴の瞳を見つめる。昔は彼女の考えが手に取るように分かった。それなのに今は、瞳の奥に靄がかかっているように感情が読めない。

『ん、これ美味しい！』
佐「んー、うまっ。なんか、小晴好きそう」
『えー、どういうこと？』
佐「そのままの意味だけど？」

運ばれてきたスープに舌鼓を打つ小晴。薄味のそれは昔小晴がよく好んでいた味付けに似ている。食の好みは変わっていないんだな。

メインもサラダも終わって、デザートが提供される。ベリーソースがかかった桃色のケーキからはほんのり甘い香りがする。

『今日呼ばれたときさ、めっちゃびっくりしたんだよね』

ふと、小晴が口を開く。そのことに触れられるとは思っていなかった。

佐「そ、うだよね。ごめん」
『謝らないでよ。そんなつもりで言ったんじゃない』
『大介に会うのが、ちょっと怖かっただけ。いつの間にか臆病になってたみたい』

そう話す小晴の目は揺らいでいて、やっぱり俺は小晴の仲間ではいられないみたいだ。一緒にいて話しているだけで、この関係の脆さを実感する。1度崩れてしまった橋は5年も経てば、そう易々とは立て直せない。俺の思いが先行して無理にまた橋を繋げようと思えば、今度はきっと川が氾濫してしまう。