ステージ16 ページ40
side阿部
珍しく小晴ちゃんから、飲みに行きたいと連絡が来た。いつも先に連絡するのは俺のほうで、向こうから連絡が来るのは珍しい。
いつもの居酒屋で待ち合わせると、小晴ちゃんは既に個室にいた。何だか疲れていそうで、彼女には珍しくストレスを溜めてしまったのだろうか。
阿「もしかして何か悩んでる?」
『んー』
阿「取り敢えず…飲む?」
『ん!飲みたい!』
そう言って彼女はいきなりウォッカを頼んだ。幾ら好きだからと言って、最初にしては度数が強すぎるんじゃないだろうか…彼女のためにも、明日の仕事のためにも、今日は俺はお酒は控えめにしておこう。
『それでね?聞いてよー』
阿「うん、聞くよ」
『見て、これ』
そう言って彼女が指したのは、左手首に結ばれたブレスレット。きらりとダイヤモンドが光る細身のそれが彼女に似合っていた。
今日の彼女はフロントカットアウトの緑のリブニットに、黒のスリットスカートを合わせている。全身をタイトに締めている今日の服装は、彼女の綺麗なボディラインを強調している。
阿「可愛いね。買ったの?それとも貰い物?」
『貰ったの、…大介から』
阿「え!?佐久間?」
阿「佐久間に会ったの?」
『うん、昨日呼ばれて』
佐久間が小晴ちゃんと会おうとするなんて思ってもみなかった。いつもぎこちないこの2人はいつの間にそんなに距離を縮めていたのだろうか。
阿「佐久間と仲直りできたの?」
『できてたら今日阿部ちゃんを呼んでません!!!』
そう言って空にした生ビールのジョッキをどんっと音を立てて置く。
『大介のことが分かんないよーーー。助けて阿部ちゃーん』
今度はハイボールを飲みだす。普段から味の組み合わせを気にせずお酒を飲む小晴ちゃんだが、今日は一段と色々な種類のお酒がテーブルに並んでいる。彼女はお酒に弱いわけではないが舘さんのように酔いにくいわけでもない。こんなに飲んで大丈夫だろうか。
阿「うん、話は聞くから」
『だってさ、5年ぶりに2人で会ったと思ったら突然Tiffanyだよ!?信じられる?』
『ホワイトデーと今までのお礼って言われたけどさ、そんな急に…』
阿「それは…確かに」
でも、そう言うわりには小晴ちゃんは左手首のそれを大切にしているように見えた。ブレスレットを見つめる瞳は優しくて、佐久間も小晴ちゃんも互いのことが好きなんだろうと感じる。
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作者名:不明 | 作成日時:2024年1月13日 23時